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鍬ヶ崎の作家

吉田タキノ



■ 吉田タキノについて

鍬ヶ崎(くわがさき)生まれの作家。
1917年(大正6)3月11日、岩手県下閉伊郡鍬ヶ崎町(現宮古市)の海産物加工業の家に生まれる。
小学生のとき両親と死別。
1932年(昭和7)3月、岩手県立宮古高等女学校(現宮古高等学校)を卒業。
上京して働きながら小説を書く。
1962年(昭和37)「光のように風のように」を理論社から出版。
同年の「はまべの歌」(理論社)で児童文学に初めて方言を取り入れる。
「ふるさとの民話」(1982年3月・理論社)そのほか著作は紙芝居を含め40冊余。
2008年(平成20)1月23日、肺炎のため死去。
享年90。
                   (宮古大事典より)


■ おもな作品一覧

 1 光のように風のように
    理論社 1962年
    小説
    医療ミスを扱う
    中部日本放送でラジオドラマとして放送

 2 はまべの歌 *
    挿絵/福田庄助
    理論社 1962年10月
    少年少女長篇小説シリーズ
    菊判・上製・172頁・380円
    宮古の浜辺の子らを描く
    読者を自然のなかに誘うような情感にあふれる

 3 桃の木長者 *
    挿絵/田島征三
    理論社 1964年
    名作版 日本の児童文学
    戦後の悲しい傷にめげずに生きる現代っ子ケンイチが主人公
    長篇小説

 4 ふるさとの民話
    理論社 1966年
    民話
    日本に古くから伝わる民話のユーモアと機知を
    方言を使って伝えた作品を収録

 5 山と川の接点 続・炎と血の証言
    理論社 1966年
    ドキュメンタリー
    実際に起こった松山事件の記録

 6 ざしきわらし
    理論社 1970年
    児童小説
    ざしきわらしをモチーフに、少女が叔父の家で経験した
    出来事とともに成長していくさまを描いた幻想的な作品

 7 また来た万六 *
    挿絵/高橋国利
    偕成社 1972年
    少年少女/現代創作民話全集3
    A5判変形・150頁・箱入り上製
    百数十年前に三陸地方で起きた弘化・嘉永の農民一揆と
    それを指導した万六じいさまの一生を描く

 8 みだくなし長者
    偕成社 1973年
    創作民話
    閉伊街道に伝わる民話を題材にした作品を収録

 9 かかさん 本をよむべしね
    おかあさんものがたり 偕成社 1973年
    児童小説
    無学ながらも学問の大切さを知っていた母の思い出を描く

10 ネコと茶がまのふた *
    挿絵/梶山孝明
    小峰書店 1974年2月28日
    小学生日本の民話14
    菊判・230頁・1340円
    岩手・宮城・福島に伝わる民話16篇を再話

11 なんだべなんだべ *
    挿絵/金沢佑光
    小学館 1976年7月20日
    小学館の創作民話シリーズ4
    200×160ミリ・44頁・上製
    欲張りな和尚と利口な小僧のユーモアあふれる作品

12 に王とどっこい
    小学館 1979年
    創作民話
    日本の民話のなかから有名な話を選び子供向けに書き直す

13 兄と妹たち *
    挿絵/小林与志
    小学館 1979年10月10日
    小学館の創作児童文学シリーズ11
    A5判・上製・144頁
    著者の自伝的長篇小説

14 海のかあちゃん
    少女の童話3年生 偕成社 1979年
    児童小説
    漁師の父を亡くした少女が強く生きていこうとする姿を描く

15 神歌とさかさいちょう
    岩手県の民話 偕成社 1981年
    創作民話
    市の天然記念物「逆さいちょう」にまつわる民話を再現

16 お菊のあらし *
    挿絵/梶山俊夫
    あすなろ書房 1982年7月10日
    あすなろ小学生文庫13
    創作民話
    菊判・64頁・上製
    残忍な猟師に殺された蛇が猟師の娘として生まれ変わる話

17 日本むかしむかし *
    挿絵/箕田源二郎
    けやき書房 1982年8月
    子ども世界の本
    創作民話
    A5判・168頁・上製・1200円
    日本各地の民話を再現した25話を収録

18 ふるさとのむかしばなし
    理論社 1982年
    創作民話
    津軽石川で鮭が捕れるようになったわけなど
    伝説をもとにした創作民話を11話収録

19 ろばたの夜ばなし
    理論社 1982年
    創作民話
    岩手県の民話や伝説をもとに創作した民話

20 裁かれるのはだれか <松山事件>
    けやき書房 1985年
    小説
    実際に起きた松山事件の記録小説

21 終わりの日に
    小学館 1986年
    小説
    若い付き添い婦と結核患者の少年との交流を描く

22 にわとり長者(ふるさと むかしむかし)
    けやき書房 1991年
    創作民話
    新聞に連載された創作民話を収録

23 ねずみのすもう *
    挿絵/しばはら・ち
    けやき書房 1991年3月20日
    ふるさと むかしむかし1
    創作民話
    菊判・120頁・上製
    新聞に連載された創作民話28話を収録

24 絵にかいたねこ
    教育画劇 1992年
    紙芝居
    ネコの絵ばかり描いている男の子が
    自分の書いたネコに命を救われる話

25 およめさんにばけたきつね
    教育画劇 1993年
    紙芝居
    キツネと人間のだましあいを愉快に描く

26 明のワルツ
    赤い羽根童話 中央共同募金会 1996年
    児童小説
    貧しいけれど音楽の才能にあふれた少年と
    心優しい教師との交流を描く

27 むかでのおつかい
    教育画劇 1997年
    紙芝居
    病気のイナゴのために医者を呼びにいくことになった
    ムカデの笑い話

28 いのししのすもう
    教育画劇 1998年
    紙芝居
    お月見の日に芸のできないイノシシ兄弟が
    芸のかわりに相撲をとってお月さまにほめられる話

29 消えた稲ばせ
    岩手の童話 リブリオ出版 1999年
    創作民話
    えぞの大男がいたずらする稲ばせを追いかけて
    村人が右往左往する姿をおもしろおかしく描く

30 サルとカニのもちつき
    教育画劇 2002年
    紙芝居
    食い意地のはったサルとカニが
    餅をとりあって巻き起こすゆかいな話



■ 訃報

2008年4月15日付「毎日新聞」地方版【鬼山親芳記者】

吉田タキノさん 90歳 死去=児童文学作家
 宮古市出身の児童文学作家で、「タキノおっぱ」と慕われた吉田タキノさんが1月23日、療養先の同市の病院で肺炎のため亡くなっていたことが分かった。
90歳だった。

 吉田さんは1月22日、病院で食べた夕食を肺に詰まらせ呼吸困難に陥った。
翌23日午前11時半過ぎ、親類らにみとられて息を引き取った。

 1917(大正6)年、当時の鍬ヶ崎町(現宮古市)の海産物加工業の家に生まれ、県立宮古高等女学校(現宮古高校)を卒業後に上京。
派出婦として働く。
戦後、「キューポラのある街」の著者、早船ちよの夫で児童文学者の井野川潔主宰の新作家協会に所属し小説を書く。
62年に理論社から小説「光のように風のように」と児童小説「はまべの歌」を出版。
特に宮古の浜っ子らを描いた「はまべの歌」では児童文学に方言を初めて取り入れ、作家としての地位を築いた。

 死刑確定後に無罪となった松山事件(宮城県)の支援活動にも奔走したのは、幕末期の三閉伊一揆指導者の一人で曽祖父、切牛の弥五兵衛譲りの反骨精神によるものであろう。
著作は40冊以上を数える。

 生涯独身を通し、埼玉県所沢市で教え子を指導。
04年5月に帰郷して宮古市山根町1の兄嫁家族と同居。
「あと10年は生きて宮古が舞台の児童小説をもっと書きたい」と記者に語っていた。
幼いころ、泳いだ蛸ノ浜を見渡す生家の墓地に葬られた。



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