宮古デジタル文庫

 宮 古 万 葉 集               じん編



短歌・俳句・詩句・歌謡・その他、分野を分けずに収録する
1は出だしをとって50音順に配列する
2は重要語彙によって項目を立て50音順に配列する
項目ごとに分類するため重複する






青潮のうねりて寄する荒磯に
  剣の山のするどき起伏  摂待方水


赤松をかざせる島は紺碧の
  海に落とせり真白き影を  下村海南


秋の潮しゅるるしゅるると巨湫の碑  山口剛


秋の夜のひかりはおくの宮古にも
  めぐみ隔てぬよこやまの月
             (宮古八景1 横山秋月)


浅き夢杉菜ばかりがよく育つ  山口剛


甘く喰ひ さむくなく衣(き)て暮しけり
  いそなゝとせのけふの今日まて
              盛合光恕(墓碑・辞世)


荒れくれば潮吹きやまず汐けむり
  流るる方(かた)に虹のかゝれり  駒井雅三


鮑の「小幡」
新設の宮古支店につてありて
  「小幡」に勤むることとはなりぬ  佐々木仁朗


鮑漁を明日に寝溜めの灯を落す  後藤七朗


鮟鱇が満ちたる月を呑みに浮く  後藤七朗


行こか鍬ヶ崎
戻ろか宮古
ここが思案の七戻          (俗謡?)


移植せし浜茄(はまなす)の花咲き出でぬ
  見つつぞ思ふ磯鶏(そけい)の浜辺を  西塔幸子


いすけんづ
いすまづ たいまづ はさみが 三本
きゅっきゅのきゅ    (じゃんけんの掛け声)


一に鍬型 二に鷹ヶ島
三に下がり松 あれさ袴島
 (囃し)お崎さまからやってきた
     白帆か新造か白鷺か
     可愛い船頭さんの乗船だ
鍬ヶ崎とは 誰が名をつけた
金がなけりゃ 秋ヶ崎
 (囃し)
鍬ヶ崎では 錨がいらぬ
三味や太鼓で 船つなぐ
 (囃し)
一に鍬ヶ崎 二に高島屋
三に沢屋か 緑屋か
 (囃し)お崎ではしがね 提灯つりがね
     雪駄にうちがね 沼には舘ヶ崎
                  「鍬ヶ崎甚句」


岩白き島か垣なす入江あり
  浄土ヶ浜といふところにて  佐藤佐太郎


いんぼうとーれ
からぐまんぜい
ハッタギ跳ねればカラスが喜ぶ
いでぇどご いでぇどご
向げぇ山さ 飛んでげー     (唱え言)


憂きことも束の間忘れすなほなる
  心になりて山にものいふ  西塔幸子


黄鶯児(うぐいす)の眠る枝あり梅の山  (筆塚)


受けよ母 五十の霜にかれやらて
  残るかひ有(あり)この手向草
                 南部重信(歌碑)


臼木青嵐
吹払ふあらしにつれて臼木山
  みねよりおちにける白き雲  (宮古八景1)


臼木山
青春の思い出がある臼木山
  サクラの下で描いた未来図  (宮古八景3)


打ち寄する波かとぞ聞く藤原の
  松の梢にわたるあらしを(宮古八景2 藤原晴嵐)


美しき浄土ヶ浜に亡き妻も
  子も来て遊べ春雨の降る  白鳥省吾


美しきパラソル一つ赤松の
  疎林の蔭に見えずになりぬ  摂待方水


移り住む宮古に家の定まりて
  妻ねんごろに位牌を抱く  佐々木仁朗


うねうねの浪やそうらん鍬ヶ崎
  ふる萱ぶきの雨のよすがら
            (宮古八景1 鍬ヶ崎夜雨)


生まるれば死ぬるものとは知りながら
  なおなつかしや銚子盃
            大井要右衛門(墓碑・辞世)


海青く島真白なり島かざす
  草少しあり赤松いく本  下村海南


海暮て鴨の声ほのかに白し  芭蕉(鴨墳の碑=鴨塚)


海の日の照る岩島にほつほつと
  白く見えつつ海猫は棲む   佐藤佐太郎


海を見る浜の少女に愁有り
  あかざが茂り荒ぶ砂浜  摂待方水


麗はしき海のびらうど褐昆布
  寂光ヶ浜に敷かれ光りぬ  宮沢賢治

うるはしの海のビロード昆布らは
  寂光のはまに敷かれひかりぬ  宮沢賢治(歌碑)


有路地より無路地に通ひとやすみ
  雨降らばふれ風吹かばふけ  (松山逆修供養塔)


江戸じゃ 江戸じゃ吉原
南部じゃ宮古よ ドッコイショ
宮古まさりの鍬ヶ崎 ホーサヨイヨイ
鍬ヶ崎 鍬ヶ崎には
錨がいらぬよ ドッコイショ
三味や太鼓で船つなぐ ホーサヨイヨイ
鍬ヶ崎沖には ちらほら
航海ランプよ ドッコイショ
あれは宮古の岩手丸 ホーサヨイヨイ 「鍬ヶ崎浜節」


江戸じゃ吉原 南部じゃ宮古よ ドッコイショ
  宮古まさりの 鍬ヶ崎   ホーサヨイヨイ
宮古浦には 錨がいらぬよ   ドッコイショ
  三味や太鼓で 船つなぐ  ホーサヨイヨイ
沖にゃちらほら 航海灯りよ  ドッコイショ
  あれは宮古の 大漁舟   ホーサヨイヨイ
思いがけない 大大漁だよ   ドッコイショ
  浜は大漁の 旗の波    ホーサヨイヨイ
この家座敷は めでたい座敷よ ドッコイショ
  鶴と亀とが 舞い遊ぶ   ホーサヨイヨイ
                  「鍬ヶ崎浜唄」


縁先の延びしあかざの葉むら越し
  白き波頭が立上り見ゆ     摂待方水


老いぬれば夜のみじかきも面白し  駒井梅甫(辞世)


俺(おい)ら岬の 灯台守は
妻と二人で 沖行く船の
無事を 祈って
灯(ひ)をかざす 灯をかざす
(以下略)    木下忠司「喜びも悲しみも幾歳月」


おーすんよう おーすんよう
こどすも ユワス(鰯)が でぇりょう(大漁)で
よごだぁ(竹籠)持って お出んせど
        (鍬ヶ崎の小正月行事の呼ばわり声)


岡の上の建物白し朝よひに
  聞きなじみある宮古測候所  土屋文明


沖にゃちらほら 航海灯りよ ドッコイショ
あれは宮古の 大漁舟 ホーサヨイヨイ
                  「鍬ヶ崎浜唄」


沖の石や夏霧しぶく逢ひ別れ  松村巨湫(句碑)


おきのゐて身をやくよりも悲しきは
  みやこ島べの別れなりけり  小野小町
                (沖の井伝説)


沖ノ井をいつくと問へばみちのくの
  宮古島辺に有明の月  高橋直道


奥山にもみぢ踏みわけ鳴く鹿の
  こゑきく時ぞ秋はかなしき  猿丸大夫
                (横山伝説)


尾崎帰帆
真帆片帆うち連れ帰る舟みへて
  閉伊の岬は絵となりにけり  (宮古八景2)


お正月はえーもんだ
木っ葉のような餅食って
油のような酒飲んで
お正月はえーもんだ  「歳時唄」


お旦那さまは七つの蔵をお建てなさる
扇のごとく末広く
うちわのごとく末円く
       「大漁唄い込み」もしくは「大々漁節」


おのおのに島をめぐりて海猫は
  みだれつつとぶ幾つもの島  佐藤佐太郎


思いがけない大大漁だよ ドッコイショ
浜は大漁の旗の波 ホーサヨイヨイ  「鍬ヶ崎浜唄」


親潮のたけり湧き立つ岩礁の
  どよみひねもす岩にこだます
               佐々木仁朗(魹が崎)


片隅は蔦の縄なり庵の蚊帳  岩間北溟


学校の図書庫の裏の秋の草
黄なる花咲きし
今も名知らず       石川啄木(寄生木記念館)


閑古鳥啼くや梅咲く夢の中  春夜還李堂


月山に水平線を見はるかし
  子に語りしは若き日の夢  (宮古八景3 月山)


鐘の外に音なし雪の朝ぼらけ  岩間北溟


寒月や真葛ヶ原に己礼(われ)ひとり
                 駒井東明(辞世)


元旦や先づ早池峰の袴立(はかまだち)  岩間北溟


消え残る雪まだ白し黒森の
  祖父祖母〔杉?〕の髪寒うして
             (宮古八景2 黒森暮雪)


汽車でまた御坐れ宮古の花の頃  駒井梅甫


霧こめて宮古の浦のけむる日に
  あわびたうべし人は忘れず  倉田百三


区界峠 白樺の
林を過ぎて 雲光る
もみじの窓よ 渓流よ
鉄橋渡る わが汽車よ
        駒井雅三(山田線開通祝賀の歌1番)


区界の峠の朝の冷えてゐて
  冬の木草に日の清々し  摂待方水


雲よどむ白き岩礁砂の原
  はるかに敷ける褐のびらうど  宮沢賢治


蔵売りて向うの竹の見ゆるかな  岩間北溟


暮方の末広通のあわただしさ
  新刊書を一冊購ひ求む  摂待方水


黒雲や風に聳ゆるわが故郷  黒雲雷八(辞世)


黒崎帰帆
ときおそく漕ぎ行く舟もかえるさは
  つらなり見ゆる黒崎のうち  (宮古八景1)


黒田落雁
先おりて友やまつらんおくるとも
  くろたの面にいそぐかりがね  (宮古八景1)


黒森の榧(かや)凍天をささへたり  後藤七朗


黒森暮雪
消え残る雪まだ白し黒森の
  祖父祖母〔杉?〕の髪寒うして  (宮古八景2)


黒森暮雪
立ちならぶ木のもとくらき夕ぐれも
  ゆきにさやけき黒森の山  (宮古八景1)


鍬が崎港の水照(みでり)寒々と
  続く不漁の幾年つづく     佐々木仁朗


鍬ヶ崎夜雨
うねうねの浪やそうらん鍬ヶ崎
  ふる萱ぶきの雨のよすがら  (宮古八景1)


鍬ヶ崎夜雨
しとしとと降り来る雨に灯の洩れて
  夢や楽しき春の夜の街  (宮古八景2)


恋ひ来れば重茂の坂の径(みち)遠く
  風こうこうと吹きわたりたり    佐々木仁朗


このあした海しずかなれど汐吹き岩
  われら迎うる汐ふきにけり    下村海南


この家座敷は めでたい座敷よ ドッコイショ
鶴と亀とが 舞い遊ぶ ホーサヨイヨイ
                  「鍬ヶ崎浜唄」


この群は釜石山田いまはまた
  宮古と酒の旅をつゞけぬ  宮沢賢治


潮吹穴
人恋ふる熱き想ひのたぎるごと
  清しき空に潮噴き上ぐる  (宮古八景3)


しとしとと降り来る雨に灯の洩れて
  夢や楽しき春の夜の街(宮古八景2 鍬ヶ崎夜雨)


啾々とみささぎ山に秋の風  後藤七朗


寂光のあしたの海の岩しろく
  ころもをぬげばわが身も浄し  宮沢賢治


寂光の浜のましろき巌にして
  ひとりひとでを見つめたる人  宮沢賢治


十二神山
尋(と)め行けば太古のままに木々は立ち
  まほろばの神住まひましける  (宮古八景3)


常安晩鐘
津くつくと思へば常に安くやは
  すむ山寺の入相の鐘  (宮古八景1)


浄土ヶ浜
水清き浄土ヶ浜に波寄れば
  水底の石ゆらめきて見ゆ  (宮古八景3)


白露や浄土ヶ浜の貝ひろふ  夜来


新設の宮古支店につてありて
  「小幡」に勤むることとはなりぬ  佐々木仁朗


すでに深し病はすすみ居りにけり
  遮莫(さもあらばあれ)ながし病も  摂待方水


正義を進め邪を排し
青年の意気朗らかに
一千徳の名を挙げよ
心を磨き体を錬り
事ある時は奮い立ち
一千徳の名を挙げよ  高橋寿太郎「千徳青年団の歌」


青春の思い出がある臼木山
  サクラの下で描いた未来図(宮古八景3 臼木山)


磯鶏なる対鏡閣の大広間
  巨湫 雅三(がぞう)の歌碑序幕さる  駒井雅三




大洋を遥かに帰り遡上する
  鮭に定めの命を見つむ (宮古八景3 津軽石川)


大漁旗なびかせ帰る船の上
  かもめの群の寒風に舞ふ  佐々木仁朗


高き陽に片時雨れつつ虹たてる
  浄土が浜の白き岩むら    佐々木仁朗


立ちならぶ木のもとくらき夕ぐれも
  ゆきにさやけき黒森の山(宮古八景1 黒森暮雪)


種大根の花をたわわにみだしつつ
  いかづち鳴りて俄雨降る  摂待方水(歌碑)


旅人の指も染まらん海の色  吉屋信子(浄土ヶ浜)


旅へたつ権現雪をけりて舞ふ  後藤七朗


たよりなく蕩児の群にまじりつゝ
  七月末を宮古にきたる   宮沢賢治


断崖の果てなくつづき蒼茫と
  暮れゆく海よ うみねこの声  駒井雅三(歌碑)


父乗せて舟曳きあげる雪の上  後藤七朗


1 チラリ灯台 ヤレ魹ヶ崎(とどがさき)
  行こうか釜石 もどろか宮古
  どちら向いても あで姿 あで姿
  タンタンタンと来て タンとござれ
  観光三陸 タンとござれ
2 花は椿か ヤレ石楠花か
  紅いエゾユリ 一人で咲いて
  ぬれた鴎の 歌い年 歌い年
  タンタンタンと来て タンとござれ
  観光三陸 タンとござれ
3 海のアルプス ヤレ船で越す
  狭霧晴れれば 大島小島
  夢か大漁の 旗の波 旗の波
  タンタンタンと来て タンとござれ
  観光三陸 タンとござれ
4 ビーチパラソル ヤレ松原に
  水着あの娘の 瞳がうるむ
  ヨット揺れれば 手も触れる 手も触れる
  タンタンタンと来て タンとござれ
  観光三陸 タンとござれ
5 鮑スルメよ ヤレ海の幸
  山は吹き出せ くろがねこがね
  異国通いの 船が出る 船が出る
  タンタンタンと来て タンとござれ
  観光三陸 タンとござれ
6 みどり磯の香 ヤレ胸うずく
  君と語れば 浄土ヶ浜よ
  銀の岩根に 月がさす 月がさす
  タンタンタンと来て タンとござれ
  観光三陸 タンとござれ
    「三陸観光音頭」駒井雅三作詞 半沢誠一作曲


津軽石川
大洋を遥かに帰り遡上する
  鮭に定めの命を見つむ  (宮古八景3)


月一つ何にもいらぬ庵哉  岩間北溟


津くつくと思へば常に安くやは
  すむ山寺の入相の鐘  (宮古八景1 常安晩鐘)


九十九(つづら)折る山路を越えて乗る馬の
  ゆきなづみつつ日は暮れにけり  西塔幸子


つゆほどの家ひとつ有はなすみれ  岩間北溟


吊り鮟鱇 腹づっぽりと切り落す  後藤七朗


寺を出て寺までかへる盆の月  吉川英治(句碑)


ときおそく漕ぎ行く舟もかえるさは
  つらなり見ゆる黒崎のうち
             (宮古八景1 黒崎帰帆)


年の初めによい夢見たよ
黄金升にて金はかる
お船繁盛で立てたる印
つけしコモッテ万両箱
       「宮古祝い唄」 *コモッテは大漁の印


魹(とど)が崎
親潮のたけり湧き立つ岩礁の
  どよみひねもす岩にこだます  佐々木仁朗


魹が崎きりぎし高く海照らす
  最東端の白き灯台      佐々木仁朗


魹ヶ崎
螺旋階段眼くらみて上りたり
  魹ヶ崎灯台海に浮くごと  (宮古八景3)


尋(と)め行けば太古のままに木々は立ち
  まほろばの神住まひましける
             (宮古八景3 十二神山)




長沢の南の又の岩の穴
  本来空(くう)の住みかなりけり  鞭牛


夏は夢 夢ばかりなる草まくら
  夢とむすばん あくるよのそら  鞭牛


何はたく何はたく
芹はたく芹はたく
唐土の鳥と田舎の鳥の
変わらぬ先の七草はたく  (七草唄 津軽石)


なめたかれい ぎす たこ かじか 族(ぞく)わけて
  トロール箱を積む作業せり  駒井雅三


二百十日の雲足速く吹き荒れて
  汐吹岩の汐吹きやまず  駒井雅三


猫二代 破(や)れ椀満たす どんこ汁  後藤七朗


年々にかりねの宿と馴れや来し
  保久田に落ちる雁の一つら
            (宮古八景2 保久田落雁)


延べられし昆布の中におほいなる
  釜らしきもの月にひかれり   宮沢賢治




爆音の轟き過ぎし山口の
  若葉木原にひかりみなぎる  摂待方水(歌碑)


初鰹二十六里の一とはしり  原敬
 (句帖に“宮古より今朝漁せし初鰹なりとて
  自動車にて送り越したれば”と前詞)


はつ潮の船とめてけり鍬ヶ崎  井上重厚


母も妻も めのこ昆布を刻みつぎ
  食糧難を きり抜けんとす  駒井雅三


浜茄(はまなす)も浜豌豆も花まさに
  盛りなるらん磯鶏(そけい)恋しも  西塔幸子


浜人(はもうど)の境なき墓 土筆立つ  後藤七朗


早池峰添えて行かふ人みへて
  みやこのはしの夕栄えにけり
            (宮古八景2 宮古橋夕照)


春は花こころの花も花ざかり
  野にも山にも花のおおさよ  鞭牛


万歳や渉りそめたる新晴橋  駒井梅甫


日暮の風長き舗道を吹きゆきて
  人稀に行く築地のさむし   摂待方水


日出島の太古の海の証しなる
  アンモナイトは語り継がるる
              (宮古八景3 日出島)


人恋ふる熱き想ひのたぎるごと
  清しき空に潮噴き上ぐる (宮古八景3 潮吹穴)


昼を夜を汐吹岩の汐吹くは
  秋の深める うみのさびしさ  駒井雅三


灯を消せば山の匂のしるくして
  はろけくも吾は来つるものかな 西塔幸子(歌碑)


鱶のひれ乾し鮑など中国に
  商ふ古き「小幡」と識りぬ  佐々木仁朗


吹払ふあらしにつれて臼木山
  みねよりおちにける白き雲
             (宮古八景1 臼木青嵐)


藤原晴嵐
打ち寄する波かとぞ聞く藤原の
  松の梢にわたるあらしを  (宮古八景2)


藤原夕照
(5字不明)松の葉ごしにわたるかと
  見えて浪間に夕日かがやく  (宮古八景1)


ふんわりと雲とびていぬかもめとぶ
  砂原の上にまろぶし居れば  西塔幸子


べぇごの下(く)んだり嫁の家(いぇ)ー足(あす)
                (ことわざ)


保久田落雁
年々にかりねの宿と馴れや来し
  保久田に落ちる雁の一つら  (宮古八景2)




先おりて友やまつらんおくるとも
  くろたの面にいそぐかりがね
             (宮古八景1 黒田落雁)


先たのむ月の名なりや宮古島  井上重厚


松こで待って
笹こでさっと
杉こで過ぎた


真帆片帆うち連れ帰る舟みへて
  閉伊の岬は絵となりにけり
             (宮古八景2 尾崎帰帆)


水木団子さぁせ 正月が来たが
明日は団子餅 カラスも喜ぶ
コーロコロコロ
カァラスカラス 小豆餅けっけぇ
飛んでこう 飛んでこう      「小正月」


水清き浄土ヶ浜に波寄れば
  水底の石ゆらめきて見ゆ(宮古八景3 浄土ヶ浜)


宮古浦には 錨がいらぬよ ドッコイショ
三味や太鼓で 船つなぐ ホーサヨイヨイ
                  「鍬ヶ崎浜唄」


宮古浦には
宮古浦には 名所がござる
沖を遥かに
沖を遥かに 見渡せば
一丁目 二丁目
三丁目 四丁目
五丁目までも
鮪が大漁で
鮪が大漁で ダンベに積んで
声をはりあげ
声をはりあげ 拍子をそろえ
よいと ころさで 唄い込む

お祝いは 繁ければ
お旦那さまは 七つの蔵を
お建てなさる
扇のごとく 末広く
うちわのごとく 末円く

思いがけない大々漁
数多の商人お祝い
まして漁業者なおのこと  「大々漁節」


宮古橋夕照
早池峰添えて行かふ人みへて
  みやこのはしの夕栄えにけり  (宮古八景2)


宮古町 夜のそらふかみわが友は
  山をはるかに妻こふるらし  宮沢賢治


宮古港は 名高い浦よ
網をおろせば 黄金が湧くよ
釣りをさげれば 船揃い
声をはりあげ 唄いこむ

港出るときゃ 笑って勇む
福船乗り出せゃ 二階から招く
オーイ船頭さん 寄ってごぜんせ
戻り鰹を 釣ってごぜんせ
よらさんさーえ         「あんば踊り唄」


名月は天下一なり草の庵  岩間北溟


めのこ刻み山菜をまぜ飯を炊き
  するめぽうぽう煮て ともに食ぶ  駒井雅三


もろこしの吉野といへば梅処  泰山(長根寺)


やーらくるくる飛びくるよ
恵方の方から馬こも牛こも
銭こも金こも飛んでこう  「やーらすり」(津軽石)


やーらすりすり
アキ(恵方)のほうから栗毛の馬こが
ホンカホンカ       「やーらすり」(磯鶏)


やーらすりすり
銭こが飛んでくるように
ホンカホンカ       「やーらすり」(磯鶏)


山霧の岳へしるべの神ほとけ  後藤七朗


山畠尓作久りあらし乃ゑのこ草
  阿は能なると者堂れかいふら無
(山畠につくりあらしのえのこ草
  あはのなるとはたれかいふらむ)
                神歌(横山八幡宮)


山ひとつみな名残をし花の時  幻住庵祇川


病みながら口はまめ也 時雨の日  祐義(墓碑)


横山秋月
秋の夜のひかりはおくの宮古にも
  めぐみ隔てぬよこやまの月  (宮古八景1)


横山秋月
世を護る神のみいつは横山の
  秋の夜にこそ月に著(し)るけれ (宮古八景2)


世の中を逃げすましたる住み処
             玉峯玄庵主(墓碑・辞世)


詠み置くぞ かたみとなれや歌心
  われはいづくの土となるらん
                鞭牛(忘想歌千首)


世を護る神のみいつは横山の
  秋の夜にこそ月に著(し)るけれ (宮古八景2)




羅賀丸の乗り合ひ人ら着ぶくれて
  竹篭負へり老いも若きも    佐々木仁朗


螺旋階段 眼くらみて上りたり
  魹ヶ崎灯台 海に浮くごと
              (宮古八景3 魹ヶ崎)


臨港線逆行しゆく機関車の
  排気の湯気が車体を包む  摂待方水


臨港線逆行する機関車が
  白く膨るる湯気上げて行く  摂待方水




わが庵や月見の客は萩すすき  岩間北溟


若帰る夢や見るら舞(む)菊の蝶
               刈屋団右衛門(墓碑)


我が国に年経し宮の古ければ
  御幣の串の立つところなし  横山八幡宮禰宜
                (伝承)


渉り初む橋のながさや御代の春  駒井梅甫


我れ死なば石碑はいらず大石に
  名もなき者の墓と書くべし  小国露堂(辞世)







■赤松

美しきパラソル一つ赤松の
  疎林の蔭に見えずになりぬ  摂待方水

赤松をかざせる島は紺碧の
  海に落せり真白き影を  下村海南

海青く島真白なり島かざす
  草少しあり赤松いく本  下村海南


■愛宕

寺を出て寺までかへる盆の月  吉川英治(句碑)


■鮑

霧こめて宮古の浦のけむる日に
  あわびたうべし人は忘れず  倉田百三

鮑漁を明日に寝溜めの灯を落す  後藤七朗


■鮟鱇

鮟鱇が満ちたる月を呑みに浮く  後藤七朗

吊り鮟鱇腹づっぽりと切り落す  後藤七朗


■「あんば踊り唄」

(前唄)
ヘーチャイ
宮古港は 名高い浦よ
網をおろせば 黄金が湧くよ
釣りをさげれば
(掛け声)「船揃い」
声をはりあげ オイ唄いこむ
(裏唄)
港出るときゃ 笑って勇む
福船乗り出せゃ 二階から招く
オーイ船頭さん 寄ってごぜんせ
戻り鰹を 釣ってごぜんせ
よらさんせーえ


■石川啄木

学校の図書庫の裏の秋の草
黄なる花咲きし
今も名知らず        (寄生木記念館)


■井上重厚

はつ潮の船とめてけり鍬ヶ崎

  重厚は京都落柿舎の人。
  僧の夜来とともに鍬ヶ崎の大坂屋に泊まり、
  浄土ヶ浜で舟遊びをして句を詠んだ。


■鰯

おーすんよう おーすんよう
こどすも ユワス(鰯)が でぇりょう(大漁)で
よごだぁ(竹籠)持って お出んせど
        (鍬ヶ崎の小正月行事の呼ばわり声)


■岩間北溟

元旦や先づ早池峰の袴立

鐘の外に音なし雪の朝ぼらけ

片隅は蔦の縄なり庵の蚊帳

名月は天下一なり草の庵

月一つ何にもいらぬ庵哉

わが庵や月見の客は萩すすき

蔵売りて向うの竹の見ゆるかな

つゆほどの家ひとつ有はなすみれ


■臼木山

臼木青嵐
吹払ふあらしにつれて臼木山
  みねよりおちにける白き雲  (宮古八景1)

臼木山
青春の思い出がある臼木山
  サクラの下で描いた未来図  (宮古八景3)


■海猫

おのおのに島をめぐりて海猫は
  みだれつつとぶ幾つもの島  佐藤佐太郎

海の日の照る岩島にほつほつと
  白く見えつつ海猫は棲む   佐藤佐太郎

断崖の果てなくつづき蒼茫と
  暮れゆく海ようみねこの声  駒井雅三(歌碑)


■大井要右衛門

生まるれば死ぬるものとは知りながら
  なおなつかしや銚子盃  (墓碑・辞世)


■大杉神社

海暮て鴨の声ほのかに白し  芭蕉(鴨墳の碑=鴨塚)


■おーすんよ

おーすんよ
おーすんよ
今年もさがなが大漁で……


■沖の井伝説

おきのゐて身をやくよりも悲しきは
  みやこ島べの別れなりけり  小野小町

沖ノ井をいつくと問へばみちのくの
  宮古島辺に有明の月  高橋直道


■小国露堂

我れ死なば石碑はいらず大石に
  名もなき者の墓と書くべし  (辞世)


■尾崎=黒崎・閉伊崎

尾崎帰帆
真帆片帆うち連れ帰る舟みへて
  閉伊の岬は絵となりにけり  (宮古八景2)


■お正月

お正月はえーもんだ
木っ葉のような餅食って
油のような酒飲んで
お正月はえーもんだ  「歳時唄」


■小野小町

おきのゐて身をやくよりも悲しきは
  みやこ島べの別れなりけり  (沖の井伝説)


■重茂(おもえ)

恋ひ来れば重茂の坂の径(みち)遠く
  風こうこうと吹きわたりたり    佐々木仁朗


■鰹

宮古より今朝漁せし初鰹なりとて自動車にて送り越したれば
初鰹二十六里の一とはしり  原敬(句帖)


■鴨墳の碑=鴨塚

海暮て鴨の声ほのかに白し  芭蕉(句碑)


■鴎

ふんわりと雲とびていぬかもめとぶ
  砂原の上にまろぶし居れば  西塔幸子

大漁旗なびかせ帰る船の上
  かもめの群の寒風に舞ふ  佐々木仁朗


■刈屋団右衛門

若帰る夢や見るら舞(む)菊の蝶  (墓碑)


■月山

月山
月山に水平線を見はるかし
  子に語りしは若き日の夢  (宮古八景3)


■汽車

汽車でまた御坐れ宮古の花の頃  駒井梅甫

区界峠 白樺の
林を過ぎて 雲光る
もみじの窓よ 渓流よ
鉄橋渡る わが汽車よ
        駒井雅三(山田線開通祝賀の歌1番)


■祇川(幻住庵・青灯下)

山ひとつみな名残をし花の時


■断崖(きりぎし)

魹が崎きりぎし高く海照らす
  最東端の白き灯台      佐々木仁朗


■区界

区界の峠の朝の冷えてゐて
  冬の木草に日の清々し  摂待方水

区界峠 白樺の
林を過ぎて 雲光る
もみじの窓よ 渓流よ
鉄橋渡る わが汽車よ
        駒井雅三(山田線開通祝賀の歌1番)


■倉田百三

霧こめて宮古の浦のけむる日に
  あわびたうべし人は忘れず


■黒雲雷八

黒雲や風に聳ゆるわが故郷 (辞世)


■黒崎=尾崎・閉伊崎

黒崎帰帆
ときおそく漕ぎ行く舟もかえるさは
  つらなり見ゆる黒崎のうち  (宮古八景1)


■黒田

黒田落雁
先おりて友やまつらんおくるとも
  くろたの面にいそぐかりがね  (宮古八景1)


■黒森

黒森の榧(かや)凍天をささへたり  後藤七朗

黒森暮雪
立ちならぶ木のもとくらき夕ぐれも
  ゆきにさやけき黒森の山  (宮古八景1)

黒森暮雪
消え残る雪まだ白し黒森の
  祖父祖母〔杉?〕の髪寒うして  (宮古八景2)


■鍬ヶ崎

鍬が崎港の水照(みでり)寒々と
  続く不漁の幾年つづく     佐々木仁朗

鍬ヶ崎夜雨
うねうねの浪やそうらん鍬ヶ崎
  ふる萱ぶきの雨のよすがら  (宮古八景1)

鍬ヶ崎夜雨
しとしとと降り来る雨に灯の洩れて
  夢や楽しき春の夜の街  (宮古八景2)

はつ潮の船とめてけり鍬ヶ崎  井上重厚

おーすんよう おーすんよう
こどすも ユワス(鰯)が でぇりょう(大漁)で
よごだぁ(竹籠)持って お出んせど
        (鍬ヶ崎の小正月行事の呼ばわり声)


■鍬ヶ崎甚句

ハアーア 一に鍬型 コラ 二に鷹ヶ島
三に下がり松 アレサ袴島
ハアーヨーイ ヨーイ ヨーイトサ
(囃し)お崎さまからやってきた
    白帆か新造か白鷺か
    可愛い船頭さんの乗船だ
鍬ヶ崎とは 誰が名をつけた
金がなけりゃ 秋ヶ崎
(囃し)
鍬ヶ崎では 錨がいらぬ
三味や太鼓で 船つなぐ
(囃し)
一に鍬ヶ崎 二に高島屋
三に沢屋か 緑屋か
(囃し)お崎ではしがね 提灯つりがね
    雪駄にうちがね 沼には舘ヶ崎
ドコヤッサイ ヤッサイナ

■鍬ヶ崎浜唄

江戸じゃ吉原 南部じゃ宮古よ ドッコイショ
宮古まさりの 鍬ヶ崎 ホーサヨイヨイ

宮古浦には 錨がいらぬよ ドッコイショ
三味や太鼓で 船つなぐ ホーサヨイヨイ

沖にゃちらほら 航海灯りよ ドッコイショ
あれは宮古の 大漁舟 ホーサヨイヨイ

思いがけない 大大漁だよ ドッコイショ
浜は大漁の 旗の波 ホーサヨイヨイ

この家座敷は めでたい座敷よ ドッコイショ
鶴と亀とが 舞い遊ぶ ホーサヨイヨイ


■鍬ヶ崎浜節

江戸じゃ 江戸じゃ吉原
南部じゃ宮古よ ドッコイショ
宮古まさりの鍬ヶ崎 ホーサヨイヨイ

鍬ヶ崎 鍬ヶ崎には
錨がいらぬよ ドッコイショ
三味や太鼓で船つなぐ ホーサヨイヨイ

鍬ヶ崎沖には ちらほら
航海ランプよ ドッコイショ
あれは宮古の岩手丸 ホーサヨイヨイ


■小正月(の唱え言)

水木団子さぁせ 正月が来たが
明日は団子餅 カラスも喜ぶ
コーロコロコロ
カァラスカラス 小豆餅けっけぇ
飛んでこう 飛んでこう

おーすんよう おーすんよう
こどすも ユワス(鰯)が でぇりょう(大漁)で
よごだぁ(竹籠)持って お出んせど
        (鍬ヶ崎の小正月行事の呼ばわり声)


■後藤七朗

猫二代破(や)れ椀満たすどんこ汁

父乗せて舟曳きあげる雪の上

浜人の境なき墓土筆立つ

鮑漁を明日に寝溜めの灯を落す

鮟鱇が満ちたる月を呑みに浮く

吊り鮟鱇腹づっぽりと切り落す

啾々とみささぎ山に秋の風

黒森の榧(かや)凍天をささへたり

旅へたつ権現雪をけりて舞ふ

山霧の岳へしるべの神ほとけ


■駒井雅三

断崖の果てなくつづき蒼茫と
  暮れゆく海ようみねこの声  (歌碑)

磯鶏なる対鏡閣の大広間
  巨湫 雅三(がぞう)の歌碑序幕さる

めのこ刻み山菜をまぜ飯を炊き
  するめぽうぽう煮て ともに食ぶ

母も妻もめのこ昆布を刻みつぎ
  食糧難をきり抜けんとす

二百十日の雲足速く吹き荒れて
  汐吹岩の汐吹きやまず

昼を夜を汐吹岩の汐吹くは
  秋の深めるうみのさびしさ

荒れくれば潮吹きやまず汐けむり
  流るる方(かた)に虹のかゝれり

なめたかれい ぎす たこ かじか 族(ぞく)わけて
  トロール箱を積む作業せり

三陸観光音頭
1 チラリ灯台 ヤレ魹ヶ崎
  行こうか釜石 もどろか宮古
  どちら向いても あで姿 あで姿
  タンタンタンと来て タンとござれ
  観光三陸 タンとござれ
2 花は椿か ヤレ石楠花か
  紅いエゾユリ 一人で咲いて
  ぬれた鴎の 歌い年 歌い年
  タンタンタンと来て タンとござれ
  観光三陸 タンとござれ
3 海のアルプス ヤレ船で越す
  狭霧晴れれば 大島小島
  夢か大漁の 旗の波 旗の波
  タンタンタンと来て タンとござれ
  観光三陸 タンとござれ
4 ビーチパラソル ヤレ松原に
  水着あの娘の 瞳がうるむ
  ヨット揺れれば 手も触れる 手も触れる
  タンタンタンと来て タンとござれ
  観光三陸 タンとござれ
5 鮑スルメよ ヤレ海の幸
  山は吹き出せ くろがねこがね
  異国通いの 船が出る 船が出る
  タンタンタンと来て タンとござれ
  観光三陸 タンとござれ
6 みどり磯の香 ヤレ胸うずく
  君と語れば 浄土ヶ浜よ
  銀の岩根に 月がさす 月がさす
  タンタンタンと来て タンとござれ
  観光三陸 タンとござれ
  *半沢誠一作曲

山田線開通祝賀の歌
1 区界峠 白樺の
  林を過ぎて 雲光る
  もみじの窓よ 渓流よ
  鉄橋渡る わが汽車よ
2 忽(たちま)ち展(ひら)け 陸中の
  海の匂いよ 波の音
  今盛岡と 古里が
  手に手をつなぐ 山田線
3 文化の窓が 目を開けて
  希望の朝 陽がのぼる
  みんな楽しく ほがらかに
  祝えや祝え わが汽車を
  *“開通”とは1954年11月の復旧のこと。
   曲は「鉄道唱歌」♪汽笛一声新橋を~。


■駒井東明

寒月や真葛ヶ原に己礼(われ)ひとり  辞世


■駒井梅甫

万歳や渉りそめたる新晴橋

渉り初む橋のながさや御代の春

汽車でまた御坐れ宮古の花の頃

老いぬれば夜のみじかきも面白し  辞世


■昆布 →めのこ

うるはしの海のビロード昆布らは
  寂光のはまに敷かれひかりぬ  宮沢賢治(歌碑)

麗はしき海のびらうど褐昆布
  寂光ヶ浜に敷かれ光りぬ  宮沢賢治

延べられし昆布の中におほいなる
  釜らしきもの月にひかれり   宮沢賢治


■歳時唄

お正月はえーもんだ
木っ葉のような餅食って
油のような酒飲んで
お正月はえーもんだ


■西塔幸子

ふんわりと雲とびていぬかもめとぶ
  砂原の上にまろぶし居れば

移植せし浜茄(はまなす)の花咲き出でぬ
  見つつぞ思ふ磯鶏(そけい)の浜辺を

浜茄も浜豌豆も花まさに
  盛りなるらん磯鶏恋しも

灯を消せば山の匂のしるくして
  はろけくも吾は来つるものかな  (歌碑)

九十九(つづら)折る山路を越えて乗る馬の
  ゆきなづみつつ日は暮れにけり

憂きことも束の間忘れすなほなる
  心になりて山にものいふ


■最東端

魹が崎きりぎし高く海照らす
  最東端の白き灯台      佐々木仁朗


■鮭

津軽石川
大洋を遥かに帰り遡上する
  鮭に定めの命を見つむ  (宮古八景3)


■佐々木仁朗

鮑の「小幡」
新設の宮古支店につてありて
  「小幡」に勤むることとはなりぬ

鱶のひれ乾し鮑など中国に
  商ふ古き「小幡」と識りぬ

集めたる品々倉に溢れども
  積まむ貨車も無く商談流る

物あれば売れる時代と思ひつつ
  輸送手段のなきを嘆けり

海産の宝庫に在りてつくづくと
  敗戦の疲弊身にしみて思ふ

羅賀丸の乗り合ひ人ら着ぶくれて
  竹篭負へり老いも若きも

鍬が崎港の水照(みでり)寒々と
  続く不漁の幾年つづく

高き陽に片時雨れつつ虹たてる
  浄土が浜の白き岩むら

大漁旗なびかせ帰る船の上
  かもめの群の寒風に舞ふ

魹が崎
親潮のたけり湧き立つ岩礁の
  どよみひねもす岩にこだます

魹が崎きりぎし高く海照らす
  最東端の白き灯台

恋ひ来れば重茂の坂の径(みち)遠く
  風こうこうと吹きわたりたり

移り住む宮古に家の定まりて
  妻ねんごろに位牌を抱く


■佐藤佐太郎

岩白き島か垣なす入江あり
  浄土ヶ浜といふところにて

おのおのに島をめぐりて海猫は
  みだれつつとぶ幾つもの島

海の日の照る岩島にほつほつと
  白く見えつつ海猫は棲む


■猿丸大夫

奥山にもみぢ踏みわけ鳴く鹿の
  こゑきく時ぞ秋はかなしき  (横山伝説)


■三陸観光音頭
1 チラリ灯台 ヤレ魹ヶ崎
  行こうか釜石 もどろか宮古
  どちら向いても あで姿 あで姿
  タンタンタンと来て タンとござれ
  観光三陸 タンとござれ
2 花は椿か ヤレ石楠花か
  紅いエゾユリ 一人で咲いて
  ぬれた鴎の 歌い年 歌い年
  タンタンタンと来て タンとござれ
  観光三陸 タンとござれ
3 海のアルプス ヤレ船で越す
  狭霧晴れれば 大島小島
  夢か大漁の 旗の波 旗の波
  タンタンタンと来て タンとござれ
  観光三陸 タンとござれ
4 ビーチパラソル ヤレ松原に
  水着あの娘の 瞳がうるむ
  ヨット揺れれば 手も触れる 手も触れる
  タンタンタンと来て タンとござれ
  観光三陸 タンとござれ
5 鮑スルメよ ヤレ海の幸
  山は吹き出せ くろがねこがね
  異国通いの 船が出る 船が出る
  タンタンタンと来て タンとござれ
  観光三陸 タンとござれ
6 みどり磯の香 ヤレ胸うずく
  君と語れば 浄土ヶ浜よ
  銀の岩根に 月がさす 月がさす
  タンタンタンと来て タンとござれ
  観光三陸 タンとござれ
        駒井雅三作詞 半沢誠一作曲


■潮吹穴 汐吹岩

潮吹穴
人恋ふる熱き想ひのたぎるごと
  清しき空に潮噴き上ぐる  (宮古八景3)

このあした海しずかなれど汐吹き岩
  われら迎うる汐ふきにけり    下村海南

二百十日の雲足速く吹き荒れて
  汐吹岩の汐吹きやまず    駒井雅三

昼を夜を汐吹岩の汐吹くは
  秋の深めるうみのさびしさ  駒井雅三

荒れくれば潮吹きやまず汐けむり
  流るる方(かた)に虹のかゝれり  駒井雅三


■辞世

我れ死なば石碑はいらず大石に
  名もなき者の墓と書くべし  小国露堂

黒雲や風に聳ゆるわが故郷  黒雲雷八

寒月や真葛ヶ原に己礼(われ)ひとり  駒井東明

老いぬれば夜のみじかきも面白し  駒井梅甫

甘く喰ひ さむくなく衣(き)て暮しけり
  いそなゝとせのけふの今日まて
                 盛合光恕(墓碑)

世の中を逃げすましたる住み処  玉峯玄庵主(墓碑)


生まるれば死ぬるものとは知りながら
  なおなつかしや銚子盃
            大井要右衛門(墓碑・辞世)


■下村海南

赤松をかざせる島は紺碧の海に落せり真白き影を

海青く島真白なり島かざす草少しあり赤松いく本

このあした海しずかなれど汐吹き岩
  われら迎うる汐ふきにけり


■じゃんけん

いすけんづ
いすまづ たいまづ はさみが 三本
きゅっきゅのきゅ           (掛け声)


■十二神山

十二神山
尋(と)め行けば太古のままに木々は立ち
  まほろばの神住まひましける  (宮古八景3)


■常安寺

常安晩鐘
津くつくと思へば常に安くやは
  すむ山寺の入相の鐘  (宮古八景1)


■正月

お正月はえーもんだ
木っ葉のような餅食って
油のような酒飲んで
お正月はえーもんだ  「歳時唄」


■浄土ヶ浜 宮古島 宮古の浦

白露や浄土ヶ浜の貝ひろふ  夜来

先(まず)たのむ月の名なりや宮古島  井上重厚

浄土ヶ浜
水清き浄土ヶ浜に波寄れば
  水底の石ゆらめきて見ゆ  (宮古八景3)

霧こめて宮古の浦のけむる日に
  あわびたうべし人は忘れず  倉田百三

美しき浄土ヶ浜に亡き妻も
  子も来て遊べ春雨の降る  白鳥省吾

旅人の指も染まらん海の色  吉屋信子(石川亭2階)

青潮のうねりて寄する荒磯に
  剣の山のするどき起伏  摂待方水

美しきパラソル一つ赤松の
  疎林の蔭に見えずになりぬ  摂待方水

赤松をかざせる島は紺碧の
  海に落せり真白き影を  下村海南

海青く島真白なり島かざす
  草少しあり赤松いく本  下村海南

うるはしの海のビロード昆布らは
  寂光のはまに敷かれひかりぬ  宮沢賢治(歌碑)

麗はしき海のびらうど褐昆布
  寂光ヶ浜に敷かれ光りぬ  宮沢賢治

寂光のあしたの海の岩しろく
  ころもをぬげばわが身も浄し  宮沢賢治

雲よどむ白き岩礁砂の原
  はるかに敷ける褐のびらうど  宮沢賢治

寂光の浜のましろき巌にして
  ひとりひとでを見つめたる人  宮沢賢治

延べられし昆布の中におほいなる
  釜らしきもの月にひかれり   宮沢賢治

岩白き島か垣なす入江あり
  浄土ヶ浜といふところにて  佐藤佐太郎

おのおのに島をめぐりて海猫は
  みだれつつとぶ幾つもの島  佐藤佐太郎

海の日の照る岩島にほつほつと
  白く見えつつ海猫は棲む   佐藤佐太郎

高き陽に片時雨れつつ虹たてる
  浄土が浜の白き岩むら    佐々木仁朗


■白鳥省吾

美しき浄土ヶ浜に亡き妻も子も来て遊べ春雨の降る


■神歌碑

山畠尓作久りあらし乃ゑのこ草
  阿は能なると者堂れかいふら無  (横山八幡宮)
(山畠につくりあらしのえのこ草
  あはのなるとはたれかいふらむ)


■新晴橋=宮古橋

万歳や渉りそめたる新晴橋  駒井梅甫

渉り初む橋のながさや御代の春  駒井梅甫


■末広町

暮方の末広通のあわただしさ
  新刊書を一冊購ひ求む  摂待方水


■するめ

めのこ刻み山菜をまぜ飯を炊き
  するめぽうぽう煮て ともに食ぶ  駒井雅三


■摂待方水

爆音の轟き過ぎし山口の
  若葉木原にひかりみなぎる  (歌碑)

種大根の花をたわわにみだしつつ
  いかづち鳴りて俄雨降る  (歌碑)

美しきパラソル一つ赤松の
  疎林の蔭に見えずになりぬ

青潮のうねりて寄する荒磯に
  剣の山のするどき起伏

海を見る浜の少女に愁有り
  あかざが茂り荒ぶ砂浜

縁先の延びしあかざの葉むら越し
  白き波頭が立上り見ゆ

暮方の末広通のあわただしさ
  新刊書を一冊購ひ求む

すでに深し〔深くカ?〕病はすすみ居りにけり
  遮莫(さもあらばあれ)ながし病も

日暮の風長き舗道を吹きゆきて
  人稀に行く築地のさむし

臨港線逆行しゆく機関車の
  排気の湯気が車体を包む

臨港線逆行する機関車が
  白く膨るる湯気上げて行く  摂待方水


■千徳青年団の歌

正義を進め邪を排し青年の意気朗らかに
一千徳の名を挙げよ
心を磨き体を錬り事ある時は奮い立ち
一千徳の名を挙げよ          高橋寿太郎


■磯鶏(そけい)

移植せし浜茄(はまなす)の花咲き出でぬ
  見つつぞ思ふ磯鶏の浜辺を  西塔幸子

浜茄も浜豌豆も花まさに
  盛りなるらん磯鶏恋しも  西塔幸子

沖の石や夏霧しぶく逢ひ別れ  松村巨湫(句碑)

断崖の果てなくつづき蒼茫と
  暮れゆく海ようみねこの声  駒井雅三(歌碑)

磯鶏なる対鏡閣の大広間
  巨湫 雅三(がぞう)の歌碑序幕さる  駒井雅三

秋の潮しゅるるしゅるると巨湫の碑  山口剛


■測候所

岡の上の建物白し朝よひに
  聞きなじみある宮古測候所  土屋文明


■対鏡閣

磯鶏なる対鏡閣の大広間
  巨湫 雅三(がぞう)の歌碑序幕さる  駒井雅三


■大々漁節

宮古浦には ナア アー ヨイトコノセ
宮古 キタショ 浦には 名所がござる
沖を遥かに ナア アー ヨイコノセ
沖を キタショ 遥かに アリア 見渡せば
一丁目 二丁目 ナア アー ヨイコノセ
三丁目 キタショ 四丁目 五丁目までも
鮪が大漁で ナア アー ヨイコノセ
鮪が キタショ 大漁で ダンベに積んで
声をはりあげ ナア アー ヨイコノセ
声を キタショ はりあげ 拍子をそろえ
よいと キタショ ころさで アリア 唄い込む
(大漁唄い込み)
(端声)エーイ エーイ ヨイトコラサ
(音頭)お祝いは
(端声)エーイ エーイ ヨイトコラサ
(音頭)ヤーレ 繁ければ
(端声)エーイ エーイ ヨイトコラサ
(音頭)お旦那さまは
(端声)エーイ エーイ ヨイトコラサ
(音頭)七つの蔵を
(端声)エーイ エーイ ヨイトコラサ
(音頭)ヤーレ お建てなさる
(端声)エーイ エーイ ヨイトコラサ
(音頭)扇のごとく
(端声)エーイ エーイ ヨイトコラサ
(音頭)ヤーレ 末広く
(端声)エーイ エーイ ヨイトコラサ
(音頭)うちわのごとく
(端声)エーイ エーイ ヨイトコラサ
(音頭)ヤーレ 末円く
(端声)エーイ エーイ ヨイトコラサ
(音頭)ヨイトコラサ
(端声)ヨイトコラサ
(音頭)ハァ ヨイワセ
(端声)エンス エンス ヨイワセ
(後唄)
思いがけない大々漁 ハァコリャ
数多の商人お祝い
まして漁業者なおのこと


■大漁

おーすんよう おーすんよう
こどすも ユワス(鰯)が でぇりょう(大漁)で
よごだぁ(竹籠)持って お出んせど
        (鍬ヶ崎の小正月行事の呼ばわり声)

大漁旗なびかせ帰る船の上
  かもめの群の寒風に舞ふ  佐々木仁朗


■大漁唄い込み

エース エース エース エース ヨイワセ
お祝いは エーエ エーヨイトコラサ
ヤーレ 繁ければ
お坪(庭)の松も エーエー ヨイトコラサ
ヤーレ そよそよと エーエー ヨイトコラサ
ヨイトコラサ ヨイトコラサ
出船には エーエー ヨイトコラサ
ヤーレ 花が咲き エーエー ヨイトコラサ
入り船に   エーエー ヨイトコラサ
ヤーレ 実がなりて エーエー ヨイトコラサ
実がなりそめて エーエー ヨイトコラサ
みかどになるも エーエー ヨイトコラサ
ヤーレ 蕎麦の角 エーエー ヨイトコラサ
お恵比寿は  エーエー ヨイトコラサ
いかなる月日に エーエー ヨイトコラサ
ヤーレ 生まれて エーエー ヨイトコラサ
毎日 日にち エーエー ヨイトコラサ
ヤーレ 大漁なさる ヨイトコラサ ヨイトコラサ

めでためでたが
三つめでたいが エーエー ヨイトコラサ
ヤーレ 三重なりて エーエー ヨイトコラサ
お旦那さまは エーエー ヨイトコラサ
七つの蔵を エーエー ヨイトコラサ
ヤーレ お建てなさる エーエー ヨイトコラサ
おかみさんは エーエー ヨイトコラサ
七つの蔵の お鍵とる エーエー ヨイトコラサ
扇のごとく エーエー ヨイトコラサ
ヤーレ 末広く エーエー ヨイトコラサ
団扇のごとく エーエー ヨイトコラサ
ヤーレ 末円く エーエー ヨイトコラサ
千秋万歳と エーエー ヨイトコラサ
ヤーレ お祝い申す エーエー ヨイトコラサ
ヨイトコラサ ヨイトコラサ
ヨイトコラサ ヨイトコラサ
ヨイワセ エース エースヨイワセ


■高橋寿太郎

「千徳青年団の歌」
正義を進め邪を排し青年の意気朗らかに
一千徳の名を挙げよ
心を磨き体を錬り事ある時は奮い立ち
一千徳の名を挙げよ


■高橋直道

沖ノ井をいつくと問へばみちのくの
  宮古島辺に有明の月  (沖の井伝説)


■長根寺

山ひとつみな名残をし花の時  吟者不明


■津軽石川

津軽石川
大洋を遥かに帰り遡上する
  鮭に定めの命を見つむ  (宮古八景3)


■月

先たのむ月の名なりや宮古島  井上重厚


■築地

日暮の風長き舗道を吹きゆきて
  人稀に行く築地のさむし   摂待方水


■土屋文明

岡の上の建物白し朝よひに
  聞きなじみある宮古測候所


■魹ヶ崎(とどがさき)

魹が崎
親潮のたけり湧き立つ岩礁の
  どよみひねもす岩にこだます  佐々木仁朗

魹が崎きりぎし高く海照らす
  最東端の白き灯台      佐々木仁朗

魹ヶ崎
螺旋階段眼くらみて上りたり
  魹ヶ崎灯台海に浮くごと  (宮古八景3)


■トロ箱 トロール箱

なめたかれい ぎす たこ かじか 族(ぞく)わけて
  トロール箱を積む作業せり  駒井雅三


■どんこ

猫二代破(や)れ椀満たすどんこ汁  後藤七朗


■長沢

長沢の南の又の岩の穴
  本来空(くう)の住みかなりけり  鞭牛


■七草唄

何はたく何はたく
芹はたく芹はたく
唐土の鳥と田舎の鳥の
変わらぬ先の七草はたく  (津軽石)


■南部重信

受けよ母五十の霜にかれやらて
  残るかひ有この手向草  (歌碑)


■芭蕉

海暮て鴨の声ほのかに白し  (鴨墳の碑=鴨塚)


■初鰹

宮古より今朝漁せし初鰹なりとて自動車にて送り越したれば
初鰹二十六里の一とはしり  原敬(句帖)


■七戻(ななもどり)

行こか鍬ヶ崎 戻ろか宮古 ここが思案の七戻


■浜茄子(はまなす)

移植せし浜茄(はまなす)の花咲き出でぬ
  見つつぞ思ふ磯鶏の浜辺を  西塔幸子

浜茄も浜豌豆も花まさに
  盛りなるらん磯鶏恋しも  西塔幸子


■浜人(はもうど)

浜人の境なき墓土筆立つ  後藤七朗


■早池峰

元旦や先づ早池峰の袴立(はかまだち)  岩間北溟

宮古橋夕照
早池峰添えて行かふ人みへて
  みやこのはしの夕栄えにけり  (宮古八景2)


■原敬

宮古より今朝漁せし初鰹なりとて自動車にて送り越したれば
初鰹二十六里の一とはしり  (句帖)


■日出島

日出島
日出島の太古の海の証しなる
  アンモナイトは語り継がるる  (宮古八景3)


■藤原

藤原夕照
(5字不明)松の葉ごしにわたるかと
  見えて浪間に夕日かがやく  (宮古八景1)

藤原晴嵐
打ち寄する波かとぞ聞く藤原の
  松の梢にわたるあらしを  (宮古八景2)


■舟

父乗せて舟曳きあげる雪の上  後藤七朗


■不漁

鍬が崎港の水照(みでり)寒々と
  続く不漁の幾年つづく     佐々木仁朗


■閉伊崎=尾崎・黒崎

尾崎帰帆
真帆片帆うち連れ帰る舟みへて
  閉伊の岬は絵となりにけり  (宮古八景2)


■べぇご べご べごっこ

べぇごの下(く)んだり嫁の家(いぇ)ー足(あす)
                (ことわざ)


■鞭牛

詠み置くぞ かたみとなれや歌心
  われはいづくの土となるらん  (忘想歌千首)

夏は夢 夢ばかりなる草まくら
  夢とむすばん あくるよのそら  (忘想歌千首)

春は花こころの花も花ざかり
  野にも山にも花のおおさよ  (忘想歌千首)

長沢の南の又の岩の穴
  本来空(くう)の住みかなりけり


■保久田

保久田落雁
年々にかりねの宿と馴れや来し
  保久田に落ちる雁の一つら  (宮古八景2)


■本照寺

寺を出て寺までかへる盆の月  吉川英治(句碑)


■松飾り

松こで待って 笹こでさっと 杉こで過ぎた


■松村巨湫

沖の石や夏霧しぶく逢ひ別れ  (句碑)

秋の潮しゅるるしゅるると巨湫の碑  山口剛


■宮古

移り住む宮古に家の定まりて
  妻ねんごろに位牌を抱く  佐々木仁朗

汽車でまた御坐れ宮古の花の頃  駒井梅甫

たよりなく蕩児の群にまじりつゝ
  七月末を宮古にきたる    宮沢賢治

この群は釜石山田いまはまた
  宮古と酒の旅をつゞけぬ  宮沢賢治

宮古町 夜のそらふかみわが友は
  山をはるかに妻こふるらし  宮沢賢治


■宮古祝い唄

年の初めによい夢見たよ 黄金升にて金はかる
お船繁盛で立てたる印 つけしコモッテ万両箱
              *コモッテは大漁の印


■宮古浦

霧こめて宮古の浦のけむる日に
  あわびたうべし人は忘れず  倉田百三


■宮古島(浄土ヶ浜)

先たのむ月の名なりや宮古島  井上重厚


■宮古測候所

岡の上の建物白し朝よひに
  聞きなじみある宮古測候所  土屋文明


■宮古橋=新晴橋

宮古橋夕照
早池峰添えて行かふ人みへて
  みやこのはしの夕栄えにけり  (宮古八景2)


■宮古八景1  1771年(明和8)

① 横山秋月
  秋の夜のひかりはおくの宮古にも
    めぐみ隔てぬよこやまの月

② 常安晩鐘
  津くつくと思へば常に安くやは
    すむ山寺の入相の鐘

③ 藤原夕照
  (5字不明)松の葉ごしにわたるかと
    見えて浪間に夕日かがやく

④ 黒田落雁
  先おりて友やまつらんおくるとも
    くろたの面にいそぐかりがね

⑤ 黒崎帰帆
  ときおそく漕ぎ行く舟もかえるさは
    つらなり見ゆる黒崎のうち

⑥ 鍬ヶ崎夜雨
  うねうねの浪やそうらん鍬ヶ崎
    ふる萱ぶきの雨のよすがら

⑦ 臼木青嵐
  吹払ふあらしにつれて臼木山
    みねよりおちにける白き雲

⑧ 黒森暮雪
  立ちならぶ木のもとくらき夕ぐれも
    ゆきにさやけき黒森の山


■宮古八景2  1918年(大正7)

① 黒森暮雪
  消え残る雪まだ白し黒森の
    祖父祖母〔杉?〕の髪寒うして

② 保久田落雁
  年々にかりねの宿と馴れや来し
    保久田に落ちる雁の一つら

③ 横山秋月
  世を護る神のみいつは横山の
    秋の夜にこそ月に著(し)るけれ

④ 尾崎帰帆
  真帆片帆うち連れ帰る舟みへて
    閉伊の岬は絵となりにけり

⑤ 藤原晴嵐
  打ち寄する波かとぞ聞く藤原の
    松の梢にわたるあらしを

⑥ 宮古橋夕照
  早池峰添えて行かふ人みへて
    みやこのはしの夕栄えにけり

⑦ 鍬ヶ崎夜雨
  しとしとと降り来る雨に灯の洩れて
    夢や楽しき春の夜の街

⑧ (不明)


■宮古八景3  2001年(平成13)

① 潮吹穴
  人恋ふる熱き想ひのたぎるごと
    清しき空に潮噴き上ぐる

② 日出島
  日出島の太古の海の証しなる
    アンモナイトは語り継がるる

③ 浄土ヶ浜
  水清き浄土ヶ浜に波寄れば
    水底の石ゆらめきて見ゆ

④ 臼木山
  青春の思い出がある臼木山
    サクラの下で描いた未来図

⑤ 月山
  月山に水平線を見はるかし
    子に語りしは若き日の夢

⑥ 津軽石川
  大洋を遥かに帰り遡上する
    鮭に定めの命を見つむ

⑦ 魹ヶ崎
  螺旋階段眼くらみて上りたり
    魹ヶ崎灯台海に浮くごと

⑧ 十二神山
  尋(と)め行けば太古のままに木々は立ち
    まほろばの神住まひましける


■宮沢賢治

うるはしの海のビロード昆布らは
  寂光のはまに敷かれひかりぬ  (歌碑)

たよりなく蕩児の群にまじりつゝ
  七月末を宮古にきたる

この群は釜石山田いまはまた
  宮古と酒の旅をつゞけぬ

宮古町 夜のそらふかみわが友は
  山をはるかに妻こふるらし

麗はしき海のびらうど褐昆布
  寂光ヶ浜に敷かれ光りぬ

寂光のあしたの海の岩しろく
  ころもをぬげばわが身も浄し

雲よどむ白き岩礁砂の原
  はるかに敷ける褐のびらうど

寂光の浜のましろき巌にして
  ひとりひとでを見つめたる人

延べられし昆布の中におほいなる
  釜らしきもの月にひかれり


■めのこ めのご

めのこ刻み山菜をまぜ飯を炊き
  するめぽうぽう煮て ともに食ぶ  駒井雅三

母も妻もめのこ昆布を刻みつぎ
  食糧難をきり抜けんとす  駒井雅三


■盛合光恕(みつひろ)

甘く喰ひ さむくなく衣(き)て暮しけり
  いそなゝとせのけふの今日まて  (墓碑・辞世)


■やーらすり(の唱え言)

やーらくるくる飛びくるよ
恵方の方から馬こも牛こも
銭こも金こも飛んでこう   (津軽石)

やーらすりすり
銭こが飛んでくるように
ホンカホンカ        (磯鶏)

やーらすりすり
アキ(恵方)のほうから栗毛の馬こが
ホンカホンカ        (磯鶏)


■夜来

白露や浄土ヶ浜の貝ひろふ


■寄生木記念館

学校の図書庫の裏の秋の草
黄なる花咲きし
今も名知らず        石川啄木


■山口

爆音の轟き過ぎし山口の
  若葉木原にひかりみなぎる  摂待方水(歌碑)


■山口剛

秋の潮しゅるるしゅるると巨湫の碑

浅き夢杉菜ばかりがよく育つ


■山田線

区界の峠の朝の冷えてゐて
  冬の木草に日の清々し  摂待方水

山田線開通祝賀の歌  駒井雅三
1 区界峠 白樺の
  林を過ぎて 雲光る
  もみじの窓よ 渓流よ
  鉄橋渡る わが汽車よ
2 忽(たちま)ち展(ひら)け 陸中の
  海の匂いよ 波の音
  今盛岡と 古里が
  手に手をつなぐ 山田線
3 文化の窓が 目を開けて
  希望の朝 陽がのぼる
  みんな楽しく ほがらかに
  祝えや祝え わが汽車を
  *“開通”とは1954年11月の復旧のこと。
   曲は「鉄道唱歌」♪汽笛一声新橋を~。


■祐義

病みながら口はまめ也 時雨の日  (墓碑)


■よごだ

おーすんよう おーすんよう
こどすも ユワス(鰯)が でぇりょう(大漁)で
よごだぁ(竹籠)持って お出んせど
        (鍬ヶ崎の小正月行事の呼ばわり声)


■横山八幡宮

横山秋月
秋の夜のひかりはおくの宮古にも
  めぐみ隔てぬよこやまの月  (宮古八景1)

横山秋月
世を護る神のみいつは横山の
  秋の夜にこそ月に著(し)るけれ (宮古八景2)

山畠尓作久り あらし乃ゑのこ草
  阿は能なると者 堂れかいふら無  (神歌碑)
(山畠につくりあらしのえのこ草
  あはのなるとはたれかいふらむ)

我が国に年経し宮の古ければ
  御幣の串の立つところなし  横山八幡宮禰宜
                (伝説)

奥山にもみぢ踏みわけ鳴く鹿の
  こゑきく時ぞ秋はかなしき  猿丸大夫(伝説)


■吉川英治

寺を出て寺までかへる盆の月  (句碑)


■吉屋信子

旅人の指も染まらん海の色
    *1942年(昭和17)宮古に来訪。
     浄土ヶ浜で句を詠み、色紙を石川亭に残す。


■嫁

べぇごの下(く)んだり嫁の家(いぇ)ー足(あす)
                (ことわざ)


■喜びも悲しみも幾歳月

俺(おい)ら岬の 灯台守は
妻と二人で 沖行く船の
無事を 祈って
灯(ひ)をかざす 灯をかざす
(以下略)          作詞・作曲:木下忠司


■臨港線

臨港線逆行しゆく機関車の
  排気の湯気が車体を包む  摂待方水

臨港線逆行する機関車が
  白く膨るる湯気上げて行く  摂待方水


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